改めてその「ダブル・コート」は、


初めてこのコートが出に上がったとき、極楽鳥が頭をよぎった。


極楽鳥の中でも頭にオーストリッチのような飛び出した羽が2、3本ついている小さな黒いタイプ。


その鳥はジャングルの奥で雌への求愛ダンスを披露するために、スポットライトに見立てた日光の射す広場を選んで、漆黒の艶のある羽根を丸く広げる。


首には光を反射する青白い羽根があり、時々キラッキラッと射抜く様に照り返す。


一方このコート。

艶のある漆黒の羽根は持たないけれど、確かに心地の良い手触りのラムウールを使い、他にはないタイニーなラインが森の奥の小さなダンサーに通じるエレガンスを備えていると感じた。


そこにはハイスタイルなスノッブの輝きもあり、毛織産業で富を獲た大英帝国の夢の名残を21世紀の今に表現することへの挑戦がある。